忘れられない山

忘れられない山というものは、あるものだ。登るのがしんどかったり、歩く距離が長かったり。そういう山はよく覚えている。

白山国立公園の一番北側にある、大笠山(1822m)はそんな山の一つだ。

「二度と登りたくない山」「景観が、さほど良くない」という人もいる。田中陽希はグレートトラバース2でこの大笠山から横にある笈ヶ岳を登っている。笈までの藪漕ぎが大変でやはり「二度と登りたくない山」だと感想を述べていた。

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大笠山

この山域は手付かずの自然がある秘境。この山の谷の一つである「大畠谷」は沢登りの憧れる秀渓である。日本の秘境100選にも選ばれている。この山域は標高こそ2000mにも及ばないが、とても濃厚な山が連続する山域だと思っている。

最初の登りから鎖場とハシゴが連続し、終わったと思ったら北アルプスの急登、ブナ立尾根より厳しいと言われる「フカバラノ尾根」に差し掛かる。

残雪期に登ったときは、ほとんど垂直だと思った。どうやって登るんだ、と思いつつ、枝を掴んで四つん這いになりながら登った。木の跳ね返りで股を打ったり、谷に転落しそうになったり…

樹林帯の中で周りの見えない急登が続く。しかし、山というのは、そういうものだと思っているのだが。景観は確かに無い。しかし、木は沢山ある。薮も沢山ある。

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山頂より笈ヶ岳を望む

泥まみれになりながら、山頂はまだだろうか、山頂はまだだろうか、と思いながら標高を上げていく。この山は、楽な部分が少ない。少し楽になったとおもったら、どろどろの崖を登ったりしなければならない。季節によっては道が明瞭でなかったりするだろう。1600m付近の見上げるようなピークを見たとき「もう二度と来るものか」と本気で思った。

難所を過ぎても急登は続く。崖に人がやっと通れるだけの細い「くぼみ」が掘ってある。そこに足をかけ、飛び石を渡るように進む。

最後は笹薮を漕いで行くような急登。剱岳のようなきれいに整備された急登ではない。足元も見えない笹薮の中に階段がある。こんなものすごい場所を整備されている方は、本当に大変だろうと思う。頭がさがる。

山頂に着くと、真横に笈ヶ岳。白山。いやはや凄い景色だ。人間の作ったものは山小屋と登山道以外無い。周り中、山、山。人工物が見えない。

これを景観が無い、と言えるだろうか?

私はあまりにも素晴らしい景色にしばらく呆然となった。

たった1800mあまりの標高の山に登るのに、5時間30分。これだけの時間があれば、白馬岳にも、白山にも登れる。それ以上に時間がかかる。

深田久弥が「大笠山か笈ヶ岳は100名山に入れたかった」と言ったのも理解出来る。この山は「隠れた名山」の代表格だと思う。

下山後、下の方で写真を撮影しておられた方から「どうです。いい山でしょう?」と言われて、思わず首肯した。「この山は、登山のいろいろな要素が詰まっていて、登りがいのある山なんですよ」と、その方は言っておられた。

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