夏目友人帳

少女マンガだが、とても良い作品だと思う。実際、1000万部売れたという。

http://www.hakusensha.co.jp/natsume/

主人公の夏目貴志は、両親の顔も知らない。そのため、親戚に預けられる。
「妖(あやかし)」を見る能力を持っており、預けられた親戚は気味悪がって、養育をあきらめる。
学校でも、誰一人友達もいなかった。全くの「孤独」という設定だ。しかし高校生になった夏目は、過去のトラウマから、「妖」を見る能力を他人に知られることを隠して生きている。

ある日、同じ能力を持っていたという祖母の夏目レイコの遺品の「友人帳」のことを知る。
この帳面には「妖怪」の名前が書いてあり、祖母はこれを使って妖怪たちを使役していたらしい。
(名前を知られてしまうことは、妖怪たちにとって呪縛であるらしい)

「友人帳」のことを知るきっかけになった「にゃんこ先生」は、招き猫に封じられた「斑狐」。このにゃんこ先生と共同で、「友人帳」に書かれている妖怪たちに名前を返して歩く、という物語だ。

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この物語のテーマは「孤独」「友情」「感情」…など、現代社会で問題になっている事柄だ。
これが大ヒット作になったのも、これらの難しいテーマに果敢にも正面から挑戦しているからではないだろうか。
独特の懐かしい雰囲気が良い。自然の描写も良い。

作者の緑川ゆき氏は、熊本の八代出身だというが、彼の地は「天孫降臨」などの伝説のある高千穂にも近い。ああ、なるほどそういう風土があるから、こんな物語が書けるんだな、と思った。

この物語で妖怪は「街」にいるものもあるが、たいていは「自然の化身」として描かれている。

老木であったり、自然現象であったりするものが、人格を持った姿として描かれている。

それらは、「人を食う」という恐ろしい性質を常に帯びてはいるが、「人への憧れ」のような二面性を持つ。つまり妖怪は「人間と自然の間に存在する」。

妖怪は自然のままでは、人に受け入れられない。妖怪は、自然のままでなければ、存在できない。その物悲しい関係が実に切ない。

少女マンガであり、私も人に勧められるまでは存在すら知らなかったが、これは近年は同じレベルのものを読んだことのないほど、良質なマンガだと思った。

人の手の入らない自然は、急速な勢いで失われてしまった。もはや日本に「秘境」と言える場所はあるのだろうか?
妖怪たちの住む場所がなくなってしまうということは、日本人にとって、こころの故郷を失う、ということだ。

私たちは自分たちが年老いてしまった頃、こころの故郷まで失われてしまっている悲しみに、はたして耐えられるだろうか。

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